横浜地方裁判所川崎支部 昭和44年(ワ)256号 判決
原告
高橋清
高橋幸子
代理人
大竹由紀子
被告
大崎運送株式会社
鈴木豊治郎
代理人
田中登
早川俊幸
二宮充子
主文
被告両名は原告らそれぞれに対し、各自金一〇九万五、五六二円及び内金九九万五、五六二円に対する昭和四四年七月一〇日以降、内金一〇万円に対する昭和四六年三月一六日以降各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
原告らその余の請求を棄却する。
訴訟費用は四分し、その一を被告らの、その余を原告らの負担とする。
この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、仮りに執行することができる。
事実《省略》
理由
一、二、〈略〉
三、一方〈証拠〉によれば、健司は普通の知能を備えた四才一一か月の健康な男子であつて、幼稚園に在籍していたものであり、日頃両親などから道路に出る場合の注意などを教えられていて、自動車の往来する道路上に出ることの危険なことについての弁識能力を備えていたものと推定される。しかるに、健司は被告鈴木が前方注視を怠つた僅かの間に、土手の斜面を降りて自動車の往来する道路上に出て、被告車の前面に至るという危険な挙に出たのであつて、この点の同人の過失が本件事故の一因をなしていることも否定できない。そして、その過失割合は、被告鈴木が六割、健司が四割とみるのが相当である。
〈中略〉
五、(二)被害者の養育費の控除
原告らは健司の死亡により、同人が成年に達するまでの養育費の支出を免れたことになるが、右費用は、被害者本人が収入を得るための生活費と異なり、その収入とは直接関係のない費用であるところから、前記逸失利益の損害と損益相殺をなし得るか否か議論の存するところであるが、扶養義務者である原告らが相続によつて健司の損害賠償請求権を取得するものである以上、公平の観念よりして、右損害から扶養を免れたことによる利益養育費を控除するのを相当と認める。そして右養育費の額は健司が成年に達するまでの間、平均月額五、〇〇〇円程度とみるのが相当であるから、これに基き同人が成年に達して稼働を開始するまでその額は金六九万二、〇〇〇円となる。原告らの右養育費の負担割合は、特段の事情の認められない本件においては、各二分の一とみるのが相当であるから、その金額は各金三四万六、〇〇〇円宛である。
〈以下略〉(山崎宏八)